コラム

 公開日: 2017-12-08 

精神障害における日常生活の制限度合いの考え方(その1)

社会保険労務士の湯澤と申します。

障害年金は、当然ですが「診断書」が命です。

障害年金には独自の診断書があります。

医師にとって診断書の作成は「プロ」ですので、100%信頼が置けるものです。

しかし、厚生労働省(日本年金機構)ほ、「国民年金・厚生年金の障害年金の診断書を作成する医師の皆様へ」と言うタイトルで、『障害年金の診断書(精神の障害用)の記載要領〜記載にあたって留意していただきたいポイント〜』と言うパンフレットをあえて作っています。

このパンフレットは、続けて『この診断書で日本年金機構が確認すること』として『精神疾患による病態に起因する日常生活の制限の度合い』を確認するとあります。

障害年金は、働けない又は働けても著しい制限がある場合の所得補償ですから、障害の程度による、日常生活及び社会生活上の制限度合いを重要視しています。

その制限度合いを、診断書の『日常生活能力の判定』と『日常生活能力の程度』と言う項目で評価します。

まず、『日常生活能力の判定』とは、日常生活の7つの場面における制限度合いを、それぞれ評価するものです。

具体的には下記の様に評価します。

【適切な食事】

①できる

栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができる。(外食、自炊、家族・施設からの提供を問わない)

②自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

だいたいは自主的に適当量の食事を栄養のバランスを考え適時にとることができるが、時には食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。

③自主的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。

【身辺の清潔保持】

①できる

洗面、整髪、ひげ剃り、入浴、着替え等の身体の清潔を保つことが自主的に問題なく行える。必要に応じて(週に1回くらいは)、自主的に掃除や片付けができる。また、TPO(時間、場所、状況)にあった服装ができる。

②自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

身体の清潔を保つことが、ある程度自主的に行える。回数は少ないが、だいたいは自室の清掃や片付けが自主的に行える。身体の清潔を保つためには、週1回程度の助言や指導を必要とする。

③自主的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

身体の清潔を保つためには、経常的な助言や指導を必要とする。自室の清掃や片付けを自主的にはせず、いつも部屋が乱雑になるため、経常的な助言や指導を必要とする。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

常時支援をしても身体の清潔を保つことができなかっらり、自室の清掃や片付けをしないか、できない。

【金銭管理と買い物】

①できる

金銭を独力で適切に管理し、1カ月程度のやりくりが自分でできる。また、1人で自主的に計画的な買い物ができる。

②おおむねできるが時には助言や指導を必要とする

1週間程度のやりくりはだいたい自分でできるが、時には収入を超える出費をしてしまうため、時として助言や指導を必要とする。

③助言や指導があればできる

1人では金銭の管理が難しいため、3〜4日に一度手渡して買い物に付き合うなど、経常的な援助を必要とする。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

持っているお金をすぐに使ってしまうなど、金銭の管理が自分でできない、あるいは行おうとしない。

【通院と服薬】

①できる

通院や服薬の必要性を理解し、自主的かつ規則的に通院・服薬ができる。また、病状や副作用について、主治医に伝えることができる。

②おおむねできるが時には助言や指導を必要とする

自発的な通院・服薬はできるものの、時には病院に行かなかったり、薬の飲み忘れがある(週に2回以上)ので、助言や指導を必要とする。

③助言や指導があればできる

飲み忘れや、飲み方の間違い、拒薬、大量服薬をすることがしばしばあるため、経常的な援助を必要とする。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

常時の援助をしても通院・服薬をしないか、できない。

【他人との意思伝達及び対人関係】

①できる

近所、仕事場等で、挨拶など最低限の人づきあいが自主的に問題なくできる。必要に応じて、誰に対しても自分から話せる。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができる。

②おおむねできるが時には助言や指導を必要とする

最低限の人づきあいはできるものの、コミュニケーションが挨拶や事務的なことにとどまりがちで、友人を自分からつくり、継続して付き合うには、時として助言や指導を必要とする。あるいは、他者の行動に合わせられず、助言がなければ、周囲に配慮を欠いた行動をとることがある。

③助言や指導があればできる

他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動がたびたびあるため、助言や指導を必要とする。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

助言や指導をしても他者とのコミュニケーションができないか、あるいはしようとしない。また、隣近所・集団との付き合い・他者との協調性がみられず、友人等とのつきあいがほとんどなく、孤立している。

【身辺の安全保持及び危機対応】

①できる

道具や乗り物などの危険性を理解・認識しており、事故等がないよう適切な使い方・利用ができる(例えば、刃物を自分や他人に危険がないように使用する、走っている車の前に飛び出さない、など)。また、通常と異なる事態となった時(例えば火事や地震など)に他人に援助を求めたり指導に従って行動するなど、適正に対応することができる。

②おおむねできるが時には助言や指導を必要とする

道具や乗り物などの危険性を理解・認識しているが、時々適切な使い方・利用ができないことがある(例えば、ガスコンロの火を消し忘れる、使用した刃物を片付けるなどの配慮や行動を忘れる)。また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり指示に従って行動できない時がある。

③助言や指導があればできる

道具や乗り物などの危険性を十分に理解・認識できておらず、それらの使用・ 利用において、危険に注意を払うことができなかったり、頻回に忘れてしまう。 また、通常と異なる事態となった時に、パニックになり、他人に援助を求めた り、指示に従って行動するなど、適正に対応することができないことが多い。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

道具や乗り物などの危険性を理解・認識しておらず、周囲の助言や指導があっても、適切な使用・ 利用ができない、あるいはしようとしない。また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めた り、指示に従って行動するなど、適正に対応することができない。

【社会性】

①できる

社会生活に必要な手続き(例えば行政機関の各種届出や銀行での金銭の出し入れ等)や公共施設や交通機関の利用にあたって、基本的なルール(常識化された約束事や手順)を理解し、周囲の状況に合わせて適切に行動できる。

②おおむねできるが時には助言や指導を必要とする

社会生活に必要な手続きや公共施設や交通機関の利用について、習慣化されたものであれば、各々の目的や基本的なルール、周囲の状況に合わた行動がおおむねできる。だが、急にルールが変わったりすると、適正に対応することができないことがある。

③助言や指導があればできる

社会生活に必要な手続きや公共施設や交通機関の利用について、各々の目的や基本的なルールの理解が不十分であり、経常的な助言や指導がなければ、ルールを守り、周囲の状況に合わせた行動ができない。

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

社会生活に必要な手続きや公共施設や交通機関の利用について、その目的や基本的なルールの理解できない、あるいはしようとしない。そのため、助言・指導等の支援をしても、適切な行動ができない、あるいはしようとしない。

これを評価する上で、重要な前提があります。

その前提として、パンフレットには、

①入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居などにより、支援が常態化した環境下で日常生活が安定している場合であっても、(ここからが重要です)単身かつ支援がない状況で生活した場合を想定し、その場合の日常生活能力について記載する。

②診察時(来院時)の一時的な状態ではなく、現症日以前1年程度での障害状態の変動について、症状の好転と増悪の両方を勘案した上で当てはまるものを判断する。

③独居であっても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえ、能力の過大評価にならないように留意する。

と、あります。

要は、「独り暮らし」の場合にできるかどうかを判断します。

そして、精神疾患は症状に波があり、診断書作成時点の症状のみで、日常生活の制限度合いは判断できまぜん。

ある一定期間を考慮する必要があると言う事です。

医学的な診断はプロとしても、日常生活の制限度合いの評価は、医師によりまちまちと言う現実があります。

そのため、厚生労働省は、あえてこの様なパンフレットを作ったのだと思います。

上記を評価の基準として、診断書作成にあたっては、医師とよく話し合っていただきたいと思います。

次回は、『日常生活能力の程度』について説明いたします。

この記事を書いたプロ

サポート 障害年金相談室

社会保険労務士 湯澤裕至

埼玉県鴻巣市本町2-2-3 305 フラット九田 [地図]
TEL:090-8432-5603

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