コラム

2012-11-04

従業員の災害の後始末のための欠勤の取り扱い

地震、洪水などの災害は、突然さまざまな被害をもたらします。建物が無事であっても、室内の物が壊れた、倒れた、水浸しになったなどの状況は十分に考えられるところです。

液状化で住居の周囲が大変なことになることもあります。従業員の居住環境がこのような事態になり、従業員が会社に出てこない場合、会社はどう取り扱えばいいでしょうか。予め、対応の方法を知っておかないと後でひと悶着あることにもなりかねません。

まず、これらの災害の状況は、自然災害が招いたことで、かつ、従業員としましても、直ちに対応しなければ、安全・安心に居住できないわけですから、当然の行動と言えます。

こうした私的な状況を犠牲にしてまで出勤して業務につくことを強制できませんし、やむを得ないと言わざるを得ません。

では、こうした災害の対応をするための欠勤について、従業員が会社の許可を受けていない場合は、何らかの処分にすることはできるのでしょうか。

確かに、従業員には、雇用契約上の職務専念義務というのがあります。この義務に反する行為は職務懈怠(しょくむけたい または しょくむかいたい)として対象になるところです。しかし、災害の後始末のための欠勤をこれに該当させることには、いささか厳しい面があるようです。

災害によるものであること、直ちに対応しなければ住居の安全・安心が脅かされることなどを考えますと、会社の許可を受けていないとしても、職務専念義務に反する職務懈怠だとは言えないと考えます。

会社としましては、会社の業務に関連していない私的なこととはいえ、一つの非常事態であることを重視する必要があります。事情を考慮しますと、災害の後始末のための欠勤に懲戒処分を課すことはできないと考えられます。

ただし、災害の後始末に必要な日数を超えて、ずるずる欠勤し、再三の会社の指示命令にもかかわらず出社しようとしない場合には、懲戒処分の対象になってきます。

次に、災害の後始末のための欠勤に対し、欠勤した日数分の賃金カットをすることはどうでしょうか。会社としましては、働いていないのだから当然と考えます。

法的には、従業員が労働を提供することで賃金が発生するという契約ルールです。例の「ノーワーク・ノーペイだ」という原則の適用も当然と言え、違法性はありません。

しかし、形式は欠勤であるとしても、内容は災害によるためで、しかも緊急事態ですから、この点に配慮せずに賃金カットをした場合、良好な労使関係や労使関係の信頼に歪を生じることになりかねません。

会社としては、労使関係に妙な軋轢(あつれき)が生まれることのリスクが大きいと思われますので、賃金カットは避けるほうが賢明と言えます。

災害の後始末のための従業員の欠勤は、後始末にかかる日数をこまめに確認し、連絡を取り合いながら、穏便に対応することが労務的には必要になると言えます。この時に会社が守るべき利益は、健全な労使関係です。

(2012.11.04 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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