コラム

2012-11-03

災害による業務縮小を理由とする退職勧奨

先日、アメリカ東海岸を襲ったハリケーンはすさまじいものでした。日本列島をすっぽり覆うほどの大きさに驚きです。オバマ大統領みずから避難勧告を発していたのは記憶に新しいところです。

日本ではそのようなハリケーンは幸いありませんが、台風や地震、洪水で会社の業務が元通りにいかなくことがあります。経営者としましても、苦渋の決断をしなければいけなくなるわけです。

会社がとるべき方向性は、災害による状況によっていくつか分かれます。自宅待機、自宅勤務、休業扱い、転勤、出向、解雇などです。このコラムでもこれまで触れてきたところです。

実際に、どれを選択するかは、非常に迷うところですが、雇用を維持することと従業員の不利益を回避することを考えると、会社がとるべき方向が見えてきそうです。

そんな中、解雇までは酷だが、何人か会社を去ってもらう必要があるというときがあります。決して、辞めてもらうことを強制はできない状況でもあるというときです。何か、とてもあいまいで微妙な状況であることが見えてきます。

今回のテーマは、解雇の通知ではなく、退職を勧めるという退職勧奨です。災害で業務が減少、あるいは、縮小したために退職をすすめることは可能なのでしょうか。災害に備えて整理しておきたいところです。

まず、退職勧奨そのものは、ア従業員に退職の申込みを促すだけのもの、イ退職の申込みをしているものなどの実態が考えられます。これらは実際の退職勧奨をみることになりますが、退職の申込みを促すだけのものは、従業員からの申込みがあってはじめて判断の対象になります。

退職勧奨に対して、従業員が退職を決定するかどうかは基本的に自由です。したがいまして、従業員の退職の意思表示、つまり、前記のアの場合の従業員からの退職の申込みやイの場合の退職の申込みに対する承諾は、従業員の自由意思に基づくことが基本になるわけです。

日本では、退職勧奨の場合、従業員の自由意思を妨げる退職勧奨は、違法性に傾く可能性が高くなります。違法な権利侵害をしたと判断されることになります。

退職勧奨のバージョンはいろいろありますので、個々に判断しなければなりませんが、何度も勧奨行為を行ったとか、監禁状態で行ったとか、他に心理的圧迫になるような方法で行ったとかなどが認められる場合は、違法と判断されています。

権利侵害行為として、慰謝料としていくらかの損害賠償金が認められているケースも見られるところです。

災害による状況が正当な理由とはいえ、会社からの一種の追い出し行為ですから、従業員の自由意思を確保しない状況や方法で行うことは違法になりやすくなります。

このことは、雇用保険法で、退職勧奨による退職は、特定受給資格者となり(雇用保険法23条、同施行規則35条)、失業給付は解雇に準じてなされることにも、表れていると言えます。

退職勧奨を実行する際には、やむを得ない理由のもとに、違法性に傾かない範囲を死守して、慎重に行うことが肝要です。最終的には、従業員の意思にゆだねる部分をなくさないように、狭くしないようにすることが留意点になります。

(2012.11.03 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
首都圏中央社労士事務所
344-0031 埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 ☎048-748-3801

「失敗しない人事労務の豆知識」でもQ&A公開(随時追加)しています。
       ⇒ http://www.cyuuou4864.com/category/1584282.html

公式ホームページ(中小企業向けサイト) ⇒ http://www.cyuuou606.com/
公式ホームページ(労務監査専門サイト) ⇒ http://www.cyuuou4864.com/
公式facebookページ ⇒ http://www.facebook.com/cyuuou606
公式twitter ⇒ https://twitter.com/cyuuou4864
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

この記事を書いたプロ

首都圏中央社労士事務所 [ホームページ]

社会保険労務士 亀岡亜己雄

埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 [地図]
TEL:048-748-3801

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
主な業務実績等

★業務実績・企業の労務顧問、労務相談(年平均500件の対応実績)・中小企業の経営分析業務、管理会計研修・中小企業の人件費管理・中小企業の労務リスク対策・...

 
このプロの紹介記事
労務監査、労務分析による労務リスク対策を得意とする社労士 亀岡亜己雄さん

企業内の労務リスクマネジメントは企業の経営資源の適切な活用の第一歩(1/3)

「最近の労働問題は、人材の募集や採用、配置、異動、人事考課や昇給、昇進など労務管理にまつわる事柄のほか、経営者の発言や決めたことの押し付けなどが原因になっているケースが散見されます。データ上最多であるパワハラ、いじめ・嫌がらせに関しては、上...

亀岡亜己雄プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

採用から退職までの助言と支援、労働問題の事前措置と事後対応

事務所名 : 首都圏中央社労士事務所
住所 : 埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 [地図]
TEL : 048-748-3801

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

048-748-3801

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

亀岡亜己雄(かめおかあきお)

首都圏中央社労士事務所

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
◆「始末書を書け」と命じることはできるか
イメージ

日々、相談を受けている中で、多くの事案で登場するものの一つに「始末書」があります。「始末書」は、雇用社...

[ 裁判例に見る労務:始末書・誓約書等 ]

★定年前の無期雇用と定年後の嘱託有期雇用の労働条件の相違が不合理とされた例
イメージ

 嘱託有期雇用の賃金低下措置に問題を投げかける判決  一般に、多くの企業では、一定年齢により定年と...

[ 裁判例に見る労務:嘱託雇用、有期雇用 ]

◆メモやノート等はパワハラにおける損害賠償請求の役に立つのか
イメージ

パワハラは、労働問題の中でも証拠が残しにくいと言われている分野です。その足元をみてか、企業サイドは、...

[ 裁判例に見る労務・パワハラ ]

★パワハラの行為類型に関する情報の留意点
イメージ

 パワハラの当事者は、ネット上の種々の情報からパワハラにあたるか否かを判別する手掛かりを見出そうとし...

[ パワハラ ]

◆就業規則の抽象的な表現のあてはめはトラブルのもと
イメージ

雇止めや解雇といった、企業サイドがイニシアチブをとる雇用契約終了は相変わらず多くなっています。ハラスメ...

[ 雇用時事ニュースから見える労務 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ