コラム

 公開日: 2012-10-31  最終更新日: 2012-11-06

災害後の経営困難による人員削減

災害時に限らず、近年は、人員削減の手法をとる企業が増えています。人員削減は、リストラ(整理解雇)として社会的にはだれでも知るところとなっています。

最近でも、シャープ、NECが、8,000人、10,000人規模の人員削減を行っております。大手企業の人員削減が当たり前のように行われるため、中小企業も安易に人員削減を行うケースが散見されます。

人員削減は、経営的に必要であっても、労務的にはよいイメージを残さないものです。少し前までは、人員削減にあった従業員のほうも、「リストラされるのは能力がないからだ」という、会社側の理由なのに従業員の能力がないことを理由に人員削減されたかかのようなイメージを植え付けることになっていたものです。

労務の世界では、人員削減の法的な判断枠組みとして定着している基準があります。個々の判断はその基準によることになりますが、一つ一つの要素は現場実務の実態を浮き彫りにするだけに、会社としましては、最終手段と考えたいところです。

人員削減は会社側の理由による解雇であり、解雇の一つの類型として独自の基準が構築されていますが、最終的には解雇権濫用の2段階チェック(解雇する理由があるかと解雇は酷ではないか)にあてはめることになります。

第一に、人員削減を行うことの必要性がどの程度あるのかというものです。これは、人員削減に着手しなければならない必要性を求めています。人員削減しなければ会社が倒産してしまうほどの危機的状況まで求めるものではないものの、人員数を減少させることは、対象となる従業員に不利益を与える手段ですから、一定のレベルが必要になるわけです。

第二に、解雇を避ける努力をどれだけしたのかというものです。これは、企業規模や諸事情によって、できる内容や質が異なってきますので、個々にみることになります。ただ、会社としては、解雇の検討の前に、できうり限りの雇用維持を検討すべきことが求められているわけです。

第三に、解雇せざるを得ないとして、被解雇者、つまり、誰を削減するか、対象者の選択は妥当なのかということです。ここは、難しいところです。かといって、一定の選択基準もなしにやみくもに対象者を決めるとあとで問題になったときに、人員削減が認められなくなる可能性もあるわけです。

正社員の雇用維持という点では、勤務形態など会社との緊密性がより少ない従業員(有期雇用、パートなど)を対象とすることは、合理的なものという考えも見られるところです。

第四に、人員削減のための手続をきちんとしたのかというものです。従業員に何の説明もなしに行うことは通常考えらえませんが、説明の内容や回数など事案によりその質が求められるわけです。労働組合がある場合には、組合との交渉過程などが重要になってきます。

これ以外にも、解雇にあたり不利益を被る従業員に対し、代償措置あるいは、不利益緩和措置をどの程度行っているかが重要です。この措置は、先の四つの要素に明確に位置づけられないものですので、4要素以外のものとしてしっかり検討する必要があります。

これらの要素は、すべて満たすことというよりは、総合的に見て、人員削減が認められるかどうかという枠組みが近年は多くなっています。

さしずめ、解雇権濫用を判断するルールにあてはめてみますと、人員削減の必要性や解雇回避の努力は、解雇理由の合理性として判断し、対象者の選択基準や説明等の手続は、解雇することの相当性として判断することになると考えられます。

災害の場合は、人員削減の必要性は「やむを得ない」となる可能性はありますが、一般的に、人員削減そのものはかなり厳しく判断されることに変わりはありません。

災害といえども、検討する際には、世の中の風潮に惑わされず、先の4つの要素と不利益緩和の措置を柱にきめ細かな吟味を行い、ほんとうに雇用維持が不可能なのかを客観的にみることが求められると言えます。

(2012.10.31 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
首都圏中央社労士事務所
344-0031 埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 ☎048-748-3801

「失敗しない人事労務の豆知識」でもQ&A公開(随時追加)しています。
       ⇒ http://www.cyuuou4864.com/category/1584282.html

公式ホームページ(中小企業向けサイト) ⇒ http://www.cyuuou606.com/
公式ホームページ(労務監査専門サイト) ⇒ http://www.cyuuou4864.com/
公式facebookページ ⇒ http://www.facebook.com/cyuuou606
公式twitter ⇒ https://twitter.com/cyuuou4864
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

この記事を書いたプロ

首都圏中央社労士事務所 [ホームページ]

社会保険労務士 亀岡亜己雄

埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 [地図]
TEL:048-748-3801

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
主な業務実績等
どんどん進む

★業務実績・企業の労務顧問、労務相談(年平均500件の対応実績)・中小企業の経営分析業務、管理会計研修・中小企業の人件費管理・中小企業の労務リスク対策・...

けがや病気の救済制度
どんどん進む

中小企業のお手伝いや労働者の労働問題の対応の中で、業務上のけがや病気、通勤途中のけが、業務外のけがや病気などで精神的あるいは身体的に機能が正常時よりも衰える...

 
このプロの紹介記事
労務監査、労務分析による労務リスク対策を得意とする社労士 亀岡亜己雄さん

企業内の労務リスクマネジメントは企業の経営資源の適切な活用の第一歩(1/3)

「最近の労働問題は、人材の募集や採用、配置、異動、人事考課や昇給、昇進など労務管理にまつわる事柄のほか、経営者の発言や決めたことの押し付けなどが原因になっているケースが散見されます。データ上最多であるパワハラ、いじめ・嫌がらせに関しては、上...

亀岡亜己雄プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

採用から退職までの助言と支援、労働問題の事前措置と事後対応

事務所名 : 首都圏中央社労士事務所
住所 : 埼玉県春日部市一ノ割1-7-44 [地図]
TEL : 048-748-3801

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

048-748-3801

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

亀岡亜己雄(かめおかあきお)

首都圏中央社労士事務所

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
★会社の歓送迎会後の交通事故による死亡が労働災害とされた例
イメージ

 事案の概要  この事件は、従業員Bが従業員7名の会社Yの中国人研修生の歓送迎会に出席後、業務のた...

[ 裁判例に見る労務:労働災害 ]

◆「始末書を書け」と命じることはできるか
イメージ

日々、相談を受けている中で、多くの事案で登場するものの一つに「始末書」があります。「始末書」は、雇用社...

[ 裁判例に見る労務:始末書・誓約書等 ]

★定年前の無期雇用と定年後の嘱託有期雇用の労働条件の相違が不合理とされた例
イメージ

 嘱託有期雇用の賃金低下措置に問題を投げかける判決  一般に、多くの企業では、一定年齢により定年と...

[ 裁判例に見る労務:嘱託雇用、有期雇用 ]

◆メモやノート等はパワハラにおける損害賠償請求の役に立つのか
イメージ

パワハラは、労働問題の中でも証拠が残しにくいと言われている分野です。その足元をみてか、企業サイドは、...

[ 裁判例に見る労務・パワハラ ]

★パワハラの行為類型に関する情報の留意点
イメージ

 パワハラの当事者は、ネット上の種々の情報からパワハラにあたるか否かを判別する手掛かりを見出そうとし...

[ パワハラ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ