コラム

 公開日: 2012-10-30  最終更新日: 2012-11-06

災害が及ばないエリアにある拠点への従業員の転勤

九州・沖縄地方は、台風の通り道になることが多く、台風の影響で事業の運営がままならなくなる企業も出ています。また、2011.3.11などの大きな地震による被害で事業運営が止まってしまうことも想定されます。山間部の企業は土砂崩れの影響が常に付きまといます。

このような、災害の影がみえる場所に位置している企業が、災害を受けることを避けようとして、災害の少ない場所に拠点を設けて強化しようとするのは、ご自然の企業戦略と言えます。

では、そうした戦略にともなって、従業員を会社の鶴の一声で転勤させることはできるのでしょうか。会社の拠点の移動、新たな拠点の設置と配転命令との関係を整理しておくことは労務リスク予防の点からも重要です。

まず、配転命令を有効にするためには、配転命令の権利が会社にあるという根拠が必要です。特別な取り決めがなければ、通常は、就業規則や個別の同意によって根拠づけることになります。

これは、あくまでも配転命令権の根拠があるにすぎません。就業規則に配転命令を規定しているからといって配転命令していいということにはならないのです。

次に、配転命令が認められるための要素をみますと、配転命令をする業務上の必要性があるのか、配転命令によって従業員が受ける不利益の程度はどうなのか、配転命令の目的はいかなるものかという3つの大きな柱が求められています。この点は、最高裁判例や多くの裁判例で確立されているところとなっています。

したがいまして、配転命令をさせる必要性があまりなかったり、配転命令の目的が、ある部署から従業員を排除することや労働組合を弱体化することであったり、配転命令の対象である従業員の不利益が著しいものであったりする場合は、配転命令権の濫用にあたる可能性もでてきます。

従業員の受ける不利益に関しましては、「通常甘受すべき程度」であることが一つの目安とされていますので、看病や介護が必要な家族がいて代わりの者がいないとか、本人に健康上の問題があり転勤によって健康に影響を及ぼすなどの諸事情がある場合は、配転命令が濫用になる可能性が高いと考えられます。

災害によって、緊急の必要性から、遠方への転勤命令を発することは、会社としても必至ですし、事情も明確ですので、従業員のほうもある程度の負担は受けいれるべきと言えます。この点は平常時の配転命令と若干違う部分と言えます。

このような観点でみれば、災害による緊急の必要性がある場合は、「通常甘受すべき程度」が広がると捉える必要があり、従業員にもよく説明をすることが重要になります。

最後に、配転命令と解雇との関係ですが、従業員が配転命令を拒否したことを理由に解雇ができるわけではありません。配転命令権の濫用になる場合があることを考えますと、よほど妥当と言える配転命令の実態でないときは、解雇に慎重になるべきであると考えます。

以上から、配転命令に関しましては、配転命令の根拠となる十分な規定、従業員の不利益と配転命令の目的・必要性を考慮した実際の配転命令の濫用防止を厳格にみつめて、配転命令を行うことが最大のリスク防止になると思われます。

(2012.10.30 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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