コラム

 公開日: 2012-10-28  最終更新日: 2012-11-06

災害後の多様な業務命令と従業員の有給休暇

地震、雷、火事、洪水などの災害があった場合、会社の業務も通常通りにできるものではありませんので、様々な指示が飛び交うことが考えられます。

たとえば、「今日は業務ができる状態にないので自宅待機してくれ」「明日は午後からなら業務が可能なので、午後から出社してくれ」-----------このような指示命令が各場面で発せられることが想定されるところです。

これらの業務命令が、災害後の状況が仕事のできる状況にあるのか、仕事のできる状況にあっても仕事量はどうなのかなどの諸事情によって、しばらくの間、指示命令の態様が変化するのはやむを得ないとも考えられます。

会社としましても、状況が状況なだけに対応に苦慮するところです。まずは、様々な対応の指示になることを予測しつつ、前提としまして、従業員に現状を説明することが必要です。やむを得ないこととはいえ、従業員の理解を得ておくことは労務の鉄則なのです。

次に、今回のテーマであります、有給休暇の申請が従業員からなされることが考えられます。従業員も、毎回毎回ばらばらの指示命令が出されて、それに対応することの大変さがあります。有給休暇をと考えるのも無理からぬことと言えます。

有給休暇は、6か以上の勤務と8割以上の出勤で取得要件を満たします。なおかつ、従業員の意思で自由に取得する権利があります。ここのところは災害であってもまったくかわるものではありません。

法的には、この要件を満たす限り、従業員が有給休暇を取得することは問題ないと言えます。「いくら法的に認められるものでも、出てきてほしいときにまで有給休暇で休まれると業務ができない」というような、会社の声が聞こえてきそうです。

会社としての言い分も現場の状況としてはよく理解できます。しかし、のちのち、有給休暇に関係して、あるいは、まったく関係ないことで、労務トラブルになった場合、正式に有給休暇を取得させなかった事実があったことを指摘されれば、大きな問題となりますので、リスクの点から会社が不利な立場になることを考えることも外せないのです。

有給休暇に関しましては、一定の要件のもと自動的に従業員に取得権が生まれるという性質があります。災害であることを考慮してもこの原則は変わることはありません。しかも有給休暇の取得の有無を会社が指示することはできません。

ただし、法的には、会社に時季変更権というものを与えています。有給休暇の取得が従業員の自由であっても、「事業の正常な運営を妨げる」場合に該当すると認められるときは、有給休暇の取得する時季を変更することが可能です。

あくまでも、「事業の正常な運営を妨げる」場合であること、従業員とよく話し合って決定すること、取得時期の変更であることがポイントになります。したがいまして、有給休暇の取得を「ダメだ」ということはできないのです。

ちなみに、「事業の正常な運営を妨げる」かどうかは、従業員の所属する事業場を基準として、事業規模、内容、従業員の担当する作業内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等の諸般の事情を考慮して判断すべきとされています。

2011.3.11の際には、これに、震災後の事業を取り巻く状況を踏まえて個別に判断することを要請しています。これを参考に見ますと、災害時には、災害後の事業状況等を踏まえた判断が求められるところです。

(2012.10.28 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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