コラム

 公開日: 2012-10-26  最終更新日: 2012-11-06

災害を想定した高年齢者の再雇用制度の見直し

一度、地震、竜巻、台風、洪水などで被害を受けた場合、今後を考えますと、会社の人員体制を考えるのも当然と言えます。また、大きな災害が降ってきた場合を思うと、ずっと同じ人員数、人員構成で会社を運営していくことに危機意識が生まれるものです。

特に、これからますます高齢化になっていく従業員の構成を思うと、高年齢者の雇用については考えされられるところです。

高年齢者雇用安定法(以下「高年法」)によれば、定年を定める場合は、60歳未満の定年の定めは違法扱いであり、定年の廃止・引き上げ、または、継続雇用による65歳までの継続雇用を義務付けています。

実際には、現実的な運用面から、継続雇用制度を導入している企業が多いようです。方法としましては、60歳定年で一度雇用契約を解約(退職)し、継続雇用を希望する高齢者の中から一定の基準による選択をすることで、継続雇用を行うというものです。

継続雇用は、労使協定の基準を満たすこととなっており、企業側は、その基準に健康状態、出勤率・勤務態度、業績評価などを使用していたところです。

つまり、労使協定が必要なこととはいえ、継続雇用の対象とする基準は、個々の企業が任意に設定していたため、実際は、企業が対象者を選択していたものでした。

今回のテーマのように、災害を意識して、一部の高齢者を再雇用しないとすることは許されるのでしょうか。会社としましては、きちんと整理して捉えておかないと大きなリスクのなるテーマです。ここ数年、高年法をめぐる裁判例も集中しています。

現行法は、継続雇用のための選抜の基準については何も規定していません。一定の高齢者を再雇用しないことは、再雇用を一部の高齢者に絞ることですから、これまでの再雇用より厳しく選択することになると思われます。

労使協定により選択基準を設けて、再雇用の対象となる高齢者を選択することは、所定の手続きのもと、合理的に行うのであれば、たとえ一部のものでも許されると考えらえます。

しかし、災害を想定して、体力のある者、動きが早い者などの基準は、適性な基準と言えるか、その基準が災害時にどれだけ必要かなど問題になる可能性があります。また、就業規則の不利益変更として吟味の対象にもなってくることが考えらえます。

ところで、2012年に高年法が改正され、企業が労使協定によって基準を設け、継続雇用の対象となる従業員を選択することを禁じることになりました。年金の受給開始年齢が高くなることに伴い、それに合わせて65歳まで働けるようにするよう国が変えてきたのです。

これによって、高齢者の継続雇用につきましては、労使協定による選択基準によって一部の者を対象にすることができなくなってしまいました。今回のテーマのような方法をとることで違法になってしまうのです。

さらに、企業実務レベルを考えますと、65歳前に定年になったからとリタイアすると、従業員は収入がなくなるわけですから、安定した収入確保のために65歳までの雇用を希望する従業員が増加すると思われます。

会社としましては、高齢者が多ければ多いほど、難しい検討をせまられます。一つは、65歳まで雇用した場合の賃金設計の問題です。たとえば、高年齢者の賃金水準・体系、会社全体の人件費総枠の健全化などが検討テーマになるでしょう。

また、一つは、若年者層とのバランスの問題です。高年齢者層の人員数と若年層の人員数、人材パワーの健全化、新規採用の縮小などが検討テーマになるでしょう。

高齢者雇用は、今回の継続雇用の問題を含めて大きな変化のときにきています。今後は、改正高年法にしたがった社内制度が求められますので、どの企業も緊急に制度設計を見直すことが必要と言えます。

(2012.10.26 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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