コラム

 公開日: 2012-10-22  最終更新日: 2012-11-06

災害後に自宅業務等を指示して従業員からされた会社での業務請求の取り扱い

災害後、会社が業務をどのようにするかはとても迷うところです。従業員に休業させるほどでもない、あるいは、しばらくは自宅で業務を行ってもらうほうがいいなどの判断は微妙なものです。

たとえば、会社の建物はなんでもないが、取引先がダメージを受けてそのダメージの程度が、通常通り会社で業務を行っても大丈夫か決定できない。また、建物が被害を受け、出勤して仕事をさせていいか決定しにくい。一部の業務は会社でできるが、一部は会社で業務が行えない。これらのことは災害後にふりかかってきます。

会社はどう対応したらいいでしょうか。建物の危険、取引先の状況がはっきりわかるまでは、災害前と同様に業務を行わせることは避けたほうがいいと考えるのもよくわかります。

このケースで会社が、休業または自宅での業務を指示することはできるのでしょうか。また、その指示に対して、従業員から出勤して仕事がしたいと請求された場合はどう対応したらいいでしょうか。非常に迷うところです。

会社には、雇用契約上、業務命令権や指示命令権があります。その権利の行使は、さまざまな場面が考えられます。「必ず会社で仕事をする」といった特約でもないかぎり、休業の指示や自宅での業務を指示することは裁量の範囲と言えます。

もっとも、最後の状況で、休業や自宅業務の指示の必要性がないのに、そうした指示をすることは裁量権に反する可能性がでてきますので注意が必要です。

休業の場合は、他のコラムで触れましたように、災害とはいえ会社に責任があるかどうかで、休業手当の支払が必要かどうかが異なってきます。自宅での業務の場合は、特別の合意でもないかぎり、通常の賃金の支払いが必要になってきます。

会社の休業や自宅業務の指示に対し、従業員が会社で働かせてほしいと請求することも考えられます。この場合、会社は、会社での勤務ができるとはっきり確認ができない諸事情を説明し、会社での勤務が難しいことを伝えるべきです。

通常の状態で仕事をする請求権(会社での就労請求権)が従業員にあるかは微妙です。会社は従業員が働くことは拒否していません。今回の場合、災害により特別な指示をせざるを得ない理由があっての指示であることがキーになると思われます。

裁判例では、就労は権利ではなく義務との考え方も多くみられ、かなり厳しく判断がなされています。ましてや、今回のように休業や自宅業務の指示に一定の理由がある場合は、従業員にとって、会社での就労請求権は認められないと受け止めるべきかと思われます。

もっとも、雇用契約が、職種や勤務が限定されている内容の場合は、契約通りの勤務をさせることができない場合は、そうさせることができない理由との関係で、会社での就労を拒否できない場合もでてきます。災害後の事情によると思われます。

このように、災害の状況からして従業員の勤務をどうするか確定できない、しかし、通常通りの勤務ができるという決定ができる状況でもない場合、一定の理由を根拠に、従業員への説明と理解のうえ、休業や自宅業務の指示をすることは会社の裁量権と考えられます。

ただし、休業や自宅業務の指示が、災害による理由と比較して、裁量権の問題がないよう(裁量権の濫用とならないよう)、注意しつつ慎重に指示命令をすべきと考えます。

(2012.10.22 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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