コラム

 公開日: 2012-10-20  最終更新日: 2012-11-06

災害等の緊急時に従業員の出勤を義務付ける就業規則の規定

一度災害を経験すると、業務対応や後片付けなど通常では発生しない事柄を対象に、出勤命令を出すことを想定しやすくなります。特別の緊急事態ですから、出社を命令することもあり得るわけです。

緊急時の出勤命令であっても、労務的には業務命令になりますから、会社が出勤の命令権発動できるための根拠が必要になります。必然的に就業規則で統一的に定めておくというのが一般的に考えられるところです。

会社の希望としては、「災害などの緊急時には、指示・命令があったらいつでも出勤せよ」が有効になることではないかと思われます。

この場合、会社にとって必要なこととはいえ、災害等の緊急時に出勤せよと規定することは可能なのか問題になります。会社が従業員に出勤命令をだすときは、従業員のプライベートな時間帯になることも考慮する必要があります(ワークライフバランス)。就業規則に規定することでどこまで有効かは検討する必要があります。

まず、緊急時の労働が必要で、法定時間外労働や休日労働が対象になるのであれば、36協定を結んでおくのは当然です。ただし、内容は従業員の私的時間をなくさないような時間を設定したものでなければ、行政に受理されない可能性が高くなります。

たとえば、「指示があったら、緊急時には24時間いつでも出勤する体制」までは、認められないと考えられます。

緊急時の出勤命令はいつあるかわからないことのため、「出勤命令があった場合」という決め方になる可能性があります。この内容は、従業員にとってかなりの不利益を課すことになります。

就業規則の不利益変更の要件として、変更した内容を従業員に周知することと合理的であることが必要ですが、「出勤命令があった場合出勤せよ」に合理性が認められるためには、会社がこのような体制をとることのよほどの必要性が求められると考えられます。

緊急時の労働の緩和措置も求められることになるでしょう。割増賃金の支払は、法的な義務ですので措置にはなりません。また、携帯やメールなどの通信手段などの整備や取り決めも必要になります。

こうしたことを考慮しますと、「出勤命令があった場合出勤せよ」という抽象的な規定だけでは、規定内容に合理性があると認められることはほとんど難しいと思われます。また、就業規則は、就業規則の規定に反対する従業員をも拘束することになる点も加味すると、認められない可能性が高いと考えられます。

会社としましては、緊急時の出勤体制をとることは必要であるという明確な理由のもとに、交代制の勤務体制をとるなどの方法でカバーするのが妥当と考えられます。

これらを踏まえて、緊急時の勤務体制の設定、その指示・命令は慎重に行いたいところです。

(2012.10.20 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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