コラム

 公開日: 2012-10-16  最終更新日: 2012-11-06

災害を理由とする試用期間満了後の本採用拒否

一般的に、採用した従業員には、試用期間を適用している例が多くみられます。これは、採用はしたものの、会社の業務に就く適性等があるかないかは未知であるため、そのまま継続雇用を決定してしまうと会社にとってリスクがあるからという趣旨によるものです。

試用期間は、採用した従業員の業務適性等をみる期間と位置づけられ、そのための期間としては、3か月から6か月というのが適切であると考えられているようです。試用期間の長さについては、法の取り決めはありません。法的には、会社に解雇権が存在している期間(解雇権留保期間)とされています。

よく誤解されて捉えられている場合がみられますが、試用期間中は、会社が解雇していい期間ではないですから、解雇の場合は、解雇の厳しいチェックなどが適用されることになります。

ただし、試用期間における解雇は、一般の解雇よりも広く解雇理由を判断する考え方が定式化しております。たとえば、採用時には知りえなかった事実等が採用後にわかり、そのことが継続雇用を適当でないと判断させるべき内容のものであった場合などです。

そこに災害が発生し、会社が被害を受けたり、取引先が被害を受けたことの影響から、事業継続が順風ではなくなるという状況がふりかかってきたりした場合、試用期間の満了の時点で、災害を理由に本採用拒否、つまり、雇用契約を解除できるのかが問われることになります。

試用期間といえども、雇用契約は採用当初から存在していますので、試用期間の満了による解約は、解雇を意味します。本採用とは、試用期間の満了までに適性などに問題がなければ、採用時に遡って正式な社員として認められることを意味します。

「採用時に遡って」というのは、試用期間も正式に勤続年数に通算する取り扱いがされることと考えられています。

本採用拒否は、通常ですと、能力がないとか、健康状態がよくないことがわかったとか、素行がよくないとかなどの理由が一般的です。しかし、今回のように、災害を理由とする本採用拒否の場合は、その理由が若干違ってくることが考えられます。

まず、就業規則や雇用契約などに、「特別な事情があるとき」という本採用拒否の理由が掲げてある場合が考えられます。そのときは、災害によるさまざまな事情が、本採用を拒否できる「特別な事情」に該当するか否かが分岐点であると考えらえます。

次に、就業規則等にそのような定めがない場合に、なにか予想しなかった事情がふりかかったことを理由にできる可能性はあるのかが検討されると考えられます。

地震、台風、竜巻などは、通常では予想しえないことですから、それが起きたことで事情が変ったということを本採用拒否の理由にできるかどうかです(事情変更の原則)。

この場合は、本採用拒否できる理由が、災害によって予想外の影響を被ったというレベルが求められます。この2つ目の理由で本採用拒否が認められるためのハードルはかなり高いと受け止めておくべきでしょう。

会社としましては、万一を想定して、就業規則にできるだけ定めておくことで、いざというときにあてはめができるようにしておくことは肝要です。そのうえで、実際の災害状況とそこから受ける影響によりますので、災害を理由とする本採用拒否に関しましては、慎重に判断することが鉄則です。

(2012.10.16 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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