コラム

 公開日: 2016-10-19 

★会社の歓送迎会後の交通事故による死亡が労働災害とされた例

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事案の概要


 この事件は、従業員Bが従業員7名の会社Yの中国人研修生の歓送迎会に出席後、業務のために会社所有の車を運転して、会社に戻る際に、研修生を送る途中に起きた交通事故で死亡したことが業務災害にあたるかが争点になったものです。

遺族である妻Xは、Bの死亡を労災として労基署に遺族補償給付及び葬祭料の支給を求めましたが、業務上の事故ではないとして不支給の決定をしていました。地裁判決及び高裁判決は、歓送迎会が私的な会合であり、歓送迎会に付随する送迎のために従業員が任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められないとして、業務災害を否定していました。

事実概要


 Yは、定期的に中国人研修生を受け入れており、3名の帰国が近く、新たに2名が来日していることから歓送迎会の開催が企画されました。全従業員に声をかけたところ、B以外の従業員から参加の回答を得ました。

社長業務を代行していたE部長から、Bにも参加の打診がありましたが、Bは、期限までにD社長に提出すべき営業戦略資料を作成しなければならず参加できない旨を回答しました。Eは今日が最後だから顔を出せるなら出してくれないかと述べ、資料が完成していなければ、歓送迎会後に自分も一緒に作成する旨を伝えました。

歓送迎会当日、Bは、資料の作成を一時中断し、Yの所有する自動車を運転して作業着のまま歓送迎会会場の飲食店へ向かい、終了30分前の20時頃到着して参加しました。Bは、アルコール飲料は一切飲みませんでした。

飲食代は、Yの福利厚生から支払われました。Bは、21時ごろ、研修生らを乗せてアパートまで送り、職場の工場に戻る予定でしたが、アパートに向かう途中、交通事故で死亡しました。職場の工場とアパートは、飲食店からはいずれも南の方向にあり、職場の工場とアパートの距離は2㎞でした。

最高裁の判断


 最高裁は、業務災害の対象になるには業務上の事由によるものであることが必要で、その要件の一つは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態で災害が発生したことが必要であると枠組を示しました。

そのうえで、事故は、Bが、D社長に提出する資料の作成を中断して途中から参加し、業務を再開するためにY所有の車両を運転して工場に戻る際、併せて研修生らを送るために同乗させてアパートに向かう途中で発生したものである点を重視しました。

具体的には、Bが資料の作成を中断して歓送迎会に参加することになったのは、Eから個別に打診されてBが断ったにもかかわらず、Eの強い意向があり、資料作成もEが加わることを伝えられたことにあるもので、歓送迎会参加後に工場に戻ることを余儀なくされたというべきで、Bに対し職務上、一連の行動を要請していた言えるとしました。

また、歓送迎会は、従業員7名のYにおいて、Eが企画し、7名及び研修生の全員が参加し、費用がYの経費から支払われ、アパート及び飲食店間の送迎がY所有の自動車で行われたのであり、歓送迎会は、研修の目的を達成するためにYにおいて企画された行事の一環で、研修生との親睦を図ることにより、Yと親会社等との関係強化に寄与するものとしました。

さらに、研修生らをアパートまで送ることは、Eが行うことが予定されていたもので、工場とアパートの位置関係に照らして、飲食店から工場へ戻る経路から大きく逸脱するものではないことからして、Yから要請された一連の行動の範囲内であったと評価しました。

 以上から、歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、研修生らをアパートまで送ることがEからの明示的な指示のもと行われたことが窺われないことを考慮しても、事故の際、Bは会社の支配下にあったとして業務災害と認定しました。

従業員の行動が任意性のないものである場合では、酒席の歓送迎会後の事故でも、会社に支配下にあたり業務災害になることを示した例として、非常に参考になるかと思います。

(国・行橋労基署長事件 最二小 平成28年7月8日判決・労働判例ジャーナルNO.55)

【2016.10.19 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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