コラム

2012-10-12

災害による派遣先からの中途解約の対応

2011.3.11の後は、派遣社員の解雇が頻繁に行われました。震災によるやむを得ない決断であったものと推察いたします。しかし、一方では、震災とはいえ、一時期、世間を騒がせた“派遣切り”としても注目されるところとなりました。

台風、計画停電、竜巻、洪水などによって、都心部であっても派遣切りがたくさん起こることが想定されます。現実には、ルールなど気にしていられないというのが本音でしょう。しかし、契約という枠組みに基づいた考え方をしっかり理解しておきたいところです。

派遣労働者の解雇問題を検討する際に、この問題を難しくしている要素は、派遣労働者が派遣元との間に労働契約があって、実際に、働く派遣先との間に労働契約はおろか、何ら契約関係がないことです。いわゆる派遣先の間接雇用ゆえの問題です。

派遣労働者を派遣先で働かせることができる根拠は、派遣元と派遣先との間で交わされる、労働者派遣契約です。この契約が切れると派遣労働者はその派遣先で働くことができなくなるわけです。労働者派遣契約は、民事上の契約で、派遣期間が定められる場合も多くあります。

派遣労働契約との関係では、派遣元は、派遣労働者に適切に派遣先を提供するよう、できる限り努力をしなければいけないという要請があります。

ある派遣労働者が、派遣先での仕事が終わった、あるいは、派遣期間の途中で切られたことで、派遣労働者と派遣元との労働契約も終了するわけではありません。

そもそも、派遣労働者は、派遣先と何の契約関係もありませんので、派遣労働者が派遣先から中途で切られた、解雇されたということは起こりえません。派遣切りが、派遣先との関係で言われる風潮もありますので注意が必要です。

では、派遣元が派遣先との間の労働者派遣契約が、契約期間の途中で解約されたことで、派遣労働者が派遣先の仕事がなくなった場合にどう対応したらいいでしょうか。

平常時ですと、当初の派遣期間満了までの分の賃金を派遣労働者から請求されるか、別の派遣先を提供するかといった対応をしなければ違法性がでてきます。

今回のように災害による中途解約の場合は、不可抗力と判断されれば、一概に派遣元に責任があるとは言えなくなりますので、その場合は、派遣元が派遣労働者に賃金を支払う義務がないとも言えます。

シビアに見ますと、経営上、派遣元が派遣先との労働者派遣契約を中途解約されたという事実が、派遣元の事情にあると言える場合は、平均賃金の6割を休業手当として支払う必要がある可能性があります。派遣労働者が休業手当を派遣元に請求することはできると考えられるからです。

もっとも、派遣先との労働者派遣契約が解約になったときに、派遣元としても派遣労働者を解約した場合は、解雇問題となり解雇の違法性の判断をされることになります。

派遣労働契約が、期間の定めがある契約の場合は、やむを得ない理由がなければ期間途中での解約は許されませんので、「やむを得ない理由」と言えるかを吟味することになります。

このように、労働者派遣契約が契約期間の途中でなくなっても、派遣元は、派遣労働者との契約関係の中で対応を考える必要が出てきます。災害という事情によっては、平常時の場合と異なった結論になる場合も考えらえますが、基本を整理して理解しておくことは必要と思われます。

(2012.10.12 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)


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