コラム

2012-10-10

災害で業務が滞ったことによる従業員の自主的な残業の取り扱い

災害により会社の業務ができない期間が生じたあとは、滞っている仕事を追いつかせようとして、特に指示がなくても遅くまで残業することが考えられます。

早く処理しなければという従業員の前向きな姿勢の表れですから、会社としても、遅れを取り戻してほしいと思っていると、何も気にせずに、いつの間にか、そのまま残業状態を続けていたということになりかねません。

会社としてのリスクは、当然、後でやってくる残業代の支払いのことですが、このような場合にも会社は残業代を支払わなければならないのかはっきりしておきたいところです。こうしたことは、事前に知っておくことで、普段から意識づけできる点ですので、方針を決めておくことをおすすめします。

通常、上司が指示をしていない場合には、かってに働いているとして、残業代は支払わないという姿勢を貫こうとすると、従業員ともめそうです。法的には、会社が残業命令を発令して、残業の指示をして働かせるという一連の行為を示すのが残業です。

しかし、これだけであてはめますと、会社が残業命令を発令しているか否かだけを基準とすることになります。必ずしもその基準通りの実態ではないケースもあります。

たとえば、上司や管理する者が、従業員が残業していることを知りながら、残業をしないように警告を発したり、残業をやめさせたりせずに、残業を放置していた場合は、黙示的に残業を認めていたことになるかが問われることになります。

従業員の業務が、所定労働時間内では終了しきれず、日常的に残業がみられる状況になっていた場合は、明らかな残業の指示がなくても、黙示の指示があったとみなされる場合もでてきます。

一方で、従業員が、明日の所定労働時間にできる業務を、その日の所定労働時間や法定労働時間を超えて残業して業務を行ったという実態が認められるときには、従業員の自発的行為とされるという、指示に基づく残業とは認められない場合も見られます。

また、仕事の内容として、滞っていた仕事であっても、残業をしてまで追いつかせる必要があったかという点も検討される要素になると思われます。

さらに、就業規則等に、必ず必要な仕事でなくても、残業した場合は、残業手当を支払うという規定があったり、就業規則にそのような規定がなくても、業務内容にあまり関係なく、残業をした場合に残業手当を支払ってきた慣行がある場合は、残業手当を支払わなければならない可能性があります。

このように見ますと、ポイントは、従業員の行った業務が、残業をせずとも終了するものであったか否かということが非常に重要になってきます。そのうえで、会社としましては、残業を中止しようと指示しても、残業になってしまう実態を改善すべく、残業をなくす対策を講じる必要が出てくると言えます。

加えて、残業手当の支払いに関する就業規則の規定内容やそれまでの慣行を踏まえた対応が重要になってきます。

従業員の業務が、所定労働時間内で十分終了する場合は、残業を中止する指示や残業していることへの指導などにより改善を図ることが必要になってきます。放置していることは会社にとって、残業問題のリスクになる場合もありますので注意が必要と考えられます。

こうしてみますと、災害後の状況と業務のあり方に関しましては、事前に残業に関する細かに統一した指示を出しておくことがリスク回避につながると考えられます。

(2012.10.10 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)


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