コラム

 公開日: 2012-10-05  最終更新日: 2012-11-06

災害で精神的にまいっている従業員の解雇

2011.3.11の東北地方太平洋沖大震災の後は、避難所生活がかなり続いたことで精神的なダメージを受けた人が少なくありませんでした。高齢者においては、特にその症状が顕著に見られたようです。

他にも、洪水や、台風、竜巻などで家屋が倒壊するなどして、避難所生活が続く場合が考えられます。もし、従業員が、避難所生活が原因で精神的に病気になり、従前のように働くことができなくなったときに、会社はその従業員を解雇できるのでしょうか。

平常時でも、病気欠勤が長く続く場合、会社は辞めてほしいと考える傾向があります。災害がきっかけとは言え、会社としては、実務を考えると同じように考える場合が出てきます。

避難所生活は、深刻な不安、ストレスなど精神的にダメージを与え続けます。精神疾患を発症することも十分あり得るわけです。従業員のほうも、可能な限り、通院、往診、カウンセリングなどによってケアに懸命になるでしょう。

今回の問題の分かれ目は、従業員の精神疾患が、業務に支障をきたす程度であるか否かになります。はっきりしておりますのは、通院、往診、カウンセリングなどを受けている状況であっても、業務に支障がない状態であると認められる場合には、解雇はできないと判断されることになることです。

しかし、病気により業務に支障があることが認められる場合には、支障の内容を具体的に検討する必要があります。会社としては、「病気になる前に就いていた業務ができなければ、業務に支障があるので解雇」と考えるところです。

会社は、できるかぎり解雇を避ける努力をする必要があります。支障の内容も、病気になる前と同様のレベルができなくても、他の業務であれば就労可能であるという支障もあります。

少しでも、そのような状態であると判断できる場合には、業務の配置、労働時間の短縮、業務の軽減等も含めて、可能性を検討する必要がありますので、解雇は難しくなってきます。この点は、最高裁判決でも判断されているところです。

ただし、病気になる前の業務を行うことが雇用契約の内容になっている(職種限定契約)場合には、その旨を従業員に説明し、合意の上で業務の変更等を行うことが大切です。

加えて、業務に支障があるか否かの判断は、医師の診断書に基づいて会社が行うことになります。その時の医師の診断書は、従業員かかりつけの主治医、50人以上の企業では産業医、それでも判断しにくいなどの場合に会社指定医などによるものが考えられます。

特に、診断書があっても、診断書の記載内容等にもよりますので、従業員の就労可能性を見るためには、診断書は非常にキーになります。

なお、業務上以外の病気等で就労困難な状態になったときのために、多くの企業では休職制度を設定していると思われます。休職命令の発令、休職期間の長さ、雇用契約が終了する場合に解雇か休職期間満了による退職かなどについては、内容が合理的である限り、就業規則等の取り決めに従うことになります。

いずれにしましても、災害によって、従業員が精神的にまいった状態になったときの対応につきましても、平常時に検討し、方向性を出しておく必要はあると思われます。

(2012.10.05 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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