コラム

2015-08-10

◆労働者・企業にとっての裁判外紛争解決=あっせん

あっせん 社会保険労務士
労働者と企業(使用者)の個別労働問題の解決方法を大雑把に整理しますと、ア労働裁判(裁判所)、イ労働審判(裁判所)、ウあっせん(労働局または労働委員会)、エ自主的解決に分けられます。アは知らない方はいませんが、イやウは未だに知られていなかったり、名前は知っていても内容はよく知られていなかったりといったい現状があります。ここでは、あっせん制度の利用促進の趣旨から、労使双方にとってのあっせんの特徴を整理しておきたいと思います。

 裁判は、ご承知の通り、大変な時間・労力・費用を要しますからできれば避けたいところです。法的判断や事実認定を求める意向が強いのであれば、裁判に持っていくしかありませんが、相談者の中にそこまでして固執する人は少ないように思います。多くの労働問題は、裁判外の解決方法で解決に至っています。裁判、労働審判、あっせん、どの方法で行っても、紛争の当事者が100%満足する解決内容というのはありえません。労働者が、撤回しろ、謝罪しろ、支払え、企業はびた一文払わないと希望や思惑を押し通していては、問題は解決に至らず決裂してしまいます。

 労働者にとってのあっせんは、非公開、1回2時間程度(ときおり3時間ないし4時間もありますが)で解決まで行けるうえに、裁判や労働審判のように、「証拠」による事実に固執せずとも(ただし、ないよりは事実を明らかにする資料があったほうがかなり主張をコントロールできる可能性が高まります)申請できる点が利用しやすいメリットです。とりわけ、昨今、増えている「ハラスメント」の問題の場合は、明確な証拠が残しにくいことからあっせんが最も向いていると言えます。

企業にとってのあっせんは、非公開ゆえに企業のイメージダウンが回避できること、最も早く解決が図られること、裁判や労働審判のように代理人を依頼しなくても企業自身で対応できること(代理人費用の支出の抑制)、労働審判や裁判にように厳格な証拠が必要ないことなどから、低コスト、短時間で解決できる点がメリットです。

あっせんは、行政手続きであるため、労働者があっせん申請した場合、企業が応じるか応じないかは任意であることから、応じない企業も多くあることが、紛争解決の%を低くしています。短時間で解決が図られる公的な紛争解決機関があるにもかかわらず、企業の「応じない」の姿勢であっせんによる解決が消滅することで、理不尽な思いをする労働者も多くいます。

しかし、企業が留意すべきは、あっせんに応じないとの姿勢をとっても、裁判にしない解決として労働審判があります。多くの労働者は、あっせんが打切りになった場合、労働審判の申立をしますから、結局、労働審判は出頭強制ですから、企業は必ず紛争解決に応じなければならないことになります。

これらを想定しますと、企業としては、あっせんを拒否して、労働審判になると、労働審判は最高3回の調停があり時間を使う上に、代理人を立てないと対応できないケースが多く(実際、多くの企業が代理人を立てます)、費用もかかります。企業としては、代理人に支払い、労働者に和解金を支払いと支出が嵩むことになります。

こうしてあっせん制度及びあっせんと労働審判の関係をみますと、企業にとっても労働者にとってもあっせんに応じて解決を図ることが、労働問題の迅速な解決に適していると言えます。

労働者の方が留意する点は、労働者の方のみであっせん申請した場合、とかく感情的な申請書の記述が散見されます。また、あっせん申請書は、求める事項、求める理由など記載欄が狭く、詳細に書くようになっていません。

しかし、心証をよくして紛争を少しでも優位に仕向けるには、申請書には、整理して客観的に記述することが大切です。また、詳細な事実は、きちんと資料を添付し、資料に基づいた申立や陳述を伝えなければ第三者にはなかなかわかりにくいと言えます。その点では、申立書や陳述書などの書面を整え、提出すべきと言えます。あっせんの一連の書面作成を専門家に委ねるメリットはここにあります。

簡単に整理させていただきましたが、企業と労働者、双方に少しでも参考になればと思います。ぜひ、あっせんを有効活用してもらいたいと思います。

【2015.08.10 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】
あっせん 社会保険労務士

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