コラム

2015-05-13

◆退職届や退職願とは何か

高年齢者の再雇用

 近年の労働問題の共通の傾向として、離職理由にかかわらず「必ず退職届や退職願を出せ」と企業から半ば強制ともとれる態様を受けるケースが顕著にみられます。明らかな解雇や契約期間満了による退職であっても企業が退職届や退職願の提出を求めるがゆえに労働者はまったく納得していないことになり、紛争を発生させていると言えます。

そもそも、退職届や退職願とは何でしょうか。何のために出すのでしょうか。契約の始まりにおいて、労働契約は、「働きたい」「働いてください」という趣旨の意思表示を会社と労働者との間で交わすことで民法上は成立しています。ただ、いかなる契約内容なのか労働者に認識させ、後で食い違いなどが生じないように労働契約書、雇用契約書、雇入通知書などといった書面を会社は交付します。

同様に、契約の終了において、雇用契約の解約である離職は、「辞めます」「やめたいです」「承知した」「首だ」などの言葉を発した時が雇用契約の解約に結びつく意思表示です。労働者の辞めることの確定的な意思表示の場合には、辞職として扱い、辞めることを申込んだと解される意思表示の場合は、会社の承諾と受け止めることができる意思表示により最終的に決まります。会社のみの解約の意思表示と受け止められる場合は解雇となります。

こうした行為は、あくまでの雇用契約の解約に関する意思表示をしたという実態を示すもので、これらの意思表示が発信されたときは意思を表示したときになります。しかし、口頭では、契約締結時と同様に、食い違いなどの基になります。そこで、あらためて退職届や退職願を提出する意味があります。また、口頭での意思表示の代わりに書面で意思表示をする意味もあります。

しかし、退職届や退職願は、会社の解約の意思表示である解雇の場合や期間満了退職の場合は必要ありません。労働者の解約の意思表示が無関係だからです。これらの場合で、会社が退職届を出せと言うと、退職を強要された、自主退職にしようとされたなどの労働問題に発展することになるわけです。多くの労働者は、自らの意思表示で退職することになったわけではないため、異議申立として表面化します。

労働者からみれば、自らの自由意思により辞めることを決めた場合以外は、退職届を出す義務はありません。退職届は、退職することの意思表示を届け出るという趣旨です。決して、会社が指示命令して出させるものではありません。もっとも、明らかに労働者の都合による退職なのに、退職届を出してこない場合などには、「早くだすように」と促すことは許されるものですが、労働者が辞めることの意思表示を明確に示していないにもかかわらず、「退職届を出せ」という言動をとると、退職の強要、自主退職を作出などの法的問題を生じかねません。実態に基づき適切に対応することが肝要です。

【2015.05.13 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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