コラム

2013-11-29

◆偽装自己都合退職のリスク

退職勧奨の結果、労働者が退職届を出してきた、社内のセクハラやパワハラがひどく、継続して勤務できなくなったので退職すると言ってきた、残業手当を支払ってくれないと退職届を提出した・・・貴社ではこれらの場合の離職をどのように扱っているでしょうか?

貴社では、自己都合退職で処理してしまっていませんか?上記にあげたことは、一部の例にすぎません。実は、どれも自己都合退職に該当しない可能性があります。使用者が自己都合ではないのに自己都合で処理をすることを、自己都合の偽装と呼び、そうした自己都合は、形式的には自己都合でも偽装自己都合と言っています。

多くの企業は、こうした状況による離職を自己都合として処理をすることに、疑問を見出していません。実は、そこに大きなリスクが生じています。なぜ、自己都合と扱うことにリスクが生じるのか。

そもそも自己都合とは辞職を意味し、「労働者のみの自由意思による退職の意思表示」と解されるものです。最終的な労働者の意思表示が、使用者の圧力や働きかけがあったり、就業環境の問題があり就労に支障が出たためであったりした場合には、労働者の個人的な事情による退職とは言えないのです。

そこを見極めるのが重要ですが、そのような行為をしないようにすることもコンプライアンスの視点から重要です。小規模の企業の場合は、退職へつながる働きかけや圧力を経営者自ら行うことになるケースが多くあります。そのような場合、大手企業の課長による同様の行為と比較して、法的判断が異なってくることが考えられます。経営者の言動は重みがあることから、法的に厳格に判断される可能性があります。

では、なぜ自己都合と取り扱うことが起きるのでしょうか?労働者から出される「退職届」という用紙がその発端になっていると考えられます。退職届は当然労働者が書いて出してきますが、その行為のみを捉えていることがリスクを生じさせています。

重要なのは、労働者が退職届を出したことではなく、そうなったプロセスなのです。なぜ退職届を出したかということです。そもそも退職届は手続き上求められるペーパーにしかすぎません。大事なのは、「退職します」という意思表示が、労働者の本心で誰の働きかけなどによるものでないのであれば、その意思表示は自己都合と考えられます。

十分に留意して、形式だけではなく、プロセスの点でもリスクのない、真の自己都合退職をこころがけ、労働者の感情にしこりを残さない退職を形成することが大切です。

【2013.11.30 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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