コラム

 公開日: 2013-11-08 

★「派遣事業すべて許可制へ」から見える派遣労働の問題

“厚生労働省は2013年11月5日、届け出制で開業できる特定派遣事業を廃止し、すべての派遣会社を許可制の一般派遣事業に移行させる方針を固めた”。こうしたニュースがかけめぐりました。日経新聞の記事で読まれた方も多いと思います。


なお、これまでの主な派遣法に関する審議状況は以下をご参照ください。
●第197回労働力需給制度部会の資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000028726.html

●第194回労働力需給制度部会の資料の一部
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000024334.pdf

●第193回労働力需給制度部会「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000023066.pdf

労働力需給制度部会において、派遣法の改正を議論している最中です。26業務の区別をなくし、業務についている契約期間を人単位にするなどの改正案が上がっています。派遣法は、一つの転換期を迎えているようです。

1985年施行の労働者派遣法は、かなり強い常用代替防止を意図しながら、派遣労働者の不利益回避をも意識してきました。そもそも、派遣という働き方は、それが雇用社会で横行することで、派遣先の正社員が脅かされないようにすることに趣旨があったのです。

そのことに重きを置かれていたために、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業に抵触することとのバランスを図る形で、常用代替の恐れの少ない業務のみに絞って派遣対象とする方法で誕生したものです。

いつの間にか、立法趣旨が置き去りにされ、派遣労働期間を便宜的に設定し、人員調整の術として派遣労働者を利用する景色が目立ってきたのです。たとえば、派遣労働の現場では、特定派遣事業の体裁を整えてはいますが、有期雇用契約として契約締結をし、契約更新を繰り返すことが横行しています。

この問題は、派遣契約の問題と同時に、有期雇用としても問題を提供しています。有期雇用契約は、現代の雇用社会では珍しくなくなりましたが、労働者に不安定な立場の労働を提供することになっています。もっとも、働く労働者が自ら派遣や有期で働くことを望んでいる場合も多々見られますので、必ずしもすべてが問題視されるわけではありません。

では、特定派遣事業はどうして普及してきたのかと言えば、キーは「常用雇用」にあります。派遣元企業に常用雇用として労働契約を締結している労働者を派遣することに特徴があるわけです。

しかし、それだけが、特定派遣事業の普及要因ではありません。特定派遣事業に該当しない一般派遣事業の許可要件では、純資産2000万円以上、責任者講習の受講義務などの厳しい要件が課されていることも要因になっていると考えられます。また、特定派遣事業は即日受理される手続き面のメリットもあります。

一方で、「常時雇用」に法的定義はなく、1年毎の更新契約にしていたりします。また、派遣の仕事がないのに休業補償がまったくない場合も見られます。政府は労働者派遣法改正案を来年の通常国会に提出し、平成27年春から新制度に移行させたい考えのようです。

派遣事業をすべて許可制にすることで、特定派遣事業が廃止されることになります。すべて一般派遣事業になることで、一定レベルの緩和も必要になります。たとえば、純資産2000万円以上と言う要件はあまりにも厳しく、実際、中小企業では派遣事業の許可が難しくなることも考えられます。条件緩和は必須となるでしょう。

全体では、5年毎の更新が必要になるなどハードルの高さがあり、依頼業者からの信用力向上につながることが考えられます。そのことは、新規事業参入のハードルが上がることであり、派遣業者の質の向上においてプラスに機能すると考えられます。

特定派遣事業の廃止については、厚生労働省の労働政策審議会の派遣制度見直しの中で議論されています。それによれば、すべて一般派遣事業にするための法改正は、特定派遣事業の条文を削除する方向で考えています。

ちなみに、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業がいかなるものかは、派遣法で規定されています。特定労働者派遣事業は、事業所の派遣労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業を指し、一般労働者派遣事業は、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業を指すとなっています(派遣法第2条第4号及び5号)。

端的に言えば、派遣労働者全員が常時雇用される労働者でなければ、つまり、1人でも常時雇用でない労働者がいれば、それは一般労働者派遣事業ということになります。特定派遣事業が削除されればこの区別もなくなることになります。

ところで、常時雇用されている派遣労働者、派遣契約とともに労働契約が締結される派遣労働者といった労働を考えた場合、労務リスクの発生を防止する対策をどのようにするかは課題になります。立法規定が変われば別ですが、実務上、2種類の契約スタイルまで統一されるとは考えにくいと思われます。

今後、派遣法の審議過程から目が離せないようです。

【2013.11.08 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

社会保険労務士15年、関東一円を舞台に、労務リスク対策と労働問題対応をメインに走り回っております。

以下は、週2から3本の更新を心がけ、1本がA4で約3頁から5頁の分量になる記事を書いているブログサイトです。労働問題の視点から1本を1時間かけて丁寧に本気モードで書いています。

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社会保険労務士 亀岡亜己雄

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