コラム

 公開日: 2012-09-16  最終更新日: 2012-11-06

災害により有給休暇を使用し他社で収入を得る行為

実際の災害にあった場合の労務的な問題の一つは、会社の業務ができない間の会社側の対応、従業員の行為になると思われます。これらは、いざ災害が発生してから考えておりますと、とても妥当な対応ができるものではありません。平常時に決めておきたいものです。

従業員が自分の家の倒壊などの理由で、有給休暇を申請することは普通に考えられます。また、会社の業務ができないために従業員が有給休暇を取ることも普通に考えられます。従業員が自分で決定している限り、有給休暇を取っていることは問題になりません。

例えば、従業員から「1週間の有給休暇を取りたい」と申請があって、会社が、有給休暇の申請があった日と日数について承諾したとします。従業員が有給休暇の間、他社で働き7万円の収入を稼いでいました。

災害で会社の業務ができない間、このようなこともありうると考えられます。どのように取り扱ったらいいでしょうか。

経営者から見れば、そのままは受け入れがたく、「有給休暇を他で働いてお金を稼ぐために使うとはなんだ」と言いたいところです。そもそも、従業員は、有給休暇という賃金が保障されているうえ、他社で収入もあるという良い思いをしていることになるわけですから、こうした経営者の思いもよくわかります。

まず、勤続年数の長さによって有給休暇を取ることができる日数は決まっています(法律上の最低日数があり、それを超える取り決めは会社の任意)。それを根拠として従業員に有給休暇を取る権利はあって、従業員からの有給休暇の申請は、いつとるかという有給休暇をとる時期を特定する行為となります。

次に、有給休暇の目的についての考え方ですが、従業員が有給休暇をどのようなことに使おうが自由なのです。有給休暇の目的の範囲を会社が就業規則で決めたり、指定する権利はないため、他社で稼いだ従業員の有給休暇の使い方に対してとがめることはできないと言えます。

では、他社で稼いだという従業員の行為は認められるでしょうか。就業規則等で在籍中に許可する場合以外に、他で働いていけないという趣旨の規定がある場合には、兼職禁止規定との関係で検討しなければなりません。

就業規則に兼業禁止規定のある会社は多いと思います。就業規則の兼職禁止規定があることで、兼職しないことが従業員の義務となっています。通常、それに違反した場合には懲戒処分を適用するのが一般的です。

※懲戒処分には、譴責(けんせき=指導反省レベル)から懲戒解雇(汚点の付く解雇)まであります。

今回の場合、会社が営業できない状態ですから、兼業したことで会社の業務に支障が出たとまでは言えない可能性もありますから、懲戒処分を適用する場合でも、重い処分をあてはめることはできないと言えます。

社員の兼業が、競業関係や秘密保持との関係で問題になるような兼業の実態にある場合もあります。その場合は、それらを含めて、社員の兼業による会社への影響と業務への支障などを柱に総合的に判断することが必要になってきます。

結果、会社の秘密や競業の点から問題があると言える場合には、単なる兼業よりもやや重い懲戒処分になることも考えられます。いずれにしましても、懲戒処分の適用に関しましては、兼職の実態によって判断することになります。

このように、災害によって会社の業務ができない場合、有給休暇の取得と利用目的は自由であるものの、兼業として利用する場合には、有給休暇の問題ではなく兼業することの問題が浮上する可能性があります。

これらのことは、就業規則にしっかり規定し、平常時に従業員全員に周知徹底をして理解させておくことが現場では求められます。

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