コラム

2012-09-14

災害により会社の業務ができないことによる自宅待機と賃金

災害が発生し、会社の業務遂行に支障が出る場合には様々なものがあります。取引先のほとんどが被災して、取引している製品・商品が届かなくなった場合、製品・商品などを運ぶ物流の事情で業務ができなくなった場合、会社自体が災害の影響で業務ができない場合などです。

この場合の措置として、他のコラムで記載していますが、休業命令を発令する場合、有給休暇の選択を案内する場合などが考えられるところです。今回は、新たな対応として、「仕事ができないので自宅待機してくれ」というものです。

この場合、表面的には、「自宅で仕事をせよ」ではなく、「自宅待機」の指示です。果たして、従業員の側に賃金請求権があるか否かが問題となるところです。

その問題の分岐点はいかなる要素であるか考えますと、自宅待機命令の性質になります。自宅待機の命令が、業務を自宅で行うことの命令と実質的に変わらないと判断できる場合は、従業員に賃金請求権が発生すると思われます。

しかし、完全に業務が会社でできるようになるまで、自宅にいてくれという意味の自宅待機であった場合には、仕事をする命令があったとはみなされないことになりますので、従業員に賃金請求権はないと思われます。

さらに、会社が自宅待機命令に対して、給料を支払わないでもいいと言えるためには、自宅待機命令を発令しなければならない理由が認められるかどうかが重要です。

従業員に働く意思があるのに、会社が正当な理由がなく、自宅待機を命じた場合には、給料を支払わなければならず、従業員の賃金請求権は失われないと言えます。

ここでいう「正当な理由」ですが、災害などで業務ができない場合、従業員の不正行為に対する措置をする必要がある場合、伝染性や感染性のある病気の流行から従業員を保護する必要がある場合などが該当すると思われます。

今回のような災害の場合の具体例としまして、会社の機械類が破損してしまったという場合、それだけで、業務ができないことによる「自宅待機の正当な理由」として認められるかは検討する必要がでてきます。

このような場合には、単に機械類が破損したということのほか、他の代替機械も準備が不可能であったため、やむを得ず、自宅待機が必要になったことが求められます。

このように見ますと、災害時の自宅待機命令は、業務の実施がほんとうに不可能かどうか、努力を尽くすことが求められ、そのうえでのやむを得ない措置であることが必要とされます。

加えて、賃金の支払いを考慮せずともいい自宅待機の性質との関係では、自宅での仕事を求める意味合いでない、純然たる待機命令であることが求められることになります。

非常時には、突発的に命令を発令してしまうことが想定されますので、平常時にこそ、自社の状況を踏まえた、非常時の対応を頭の片隅に置いておきたいものです。


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