コラム

2012-09-05

災害により売上が減少した場合の賃金の引き下げについて

賃金の引き下げの話は、災害時に限ったことではなく、不景気が長く続いた場合や個別に経営が悪化した場合などにも頻繁に見られるところです。いずれの場合も、その原因はさまざまですが、不当な動機・目的である場合を除き、経営的上、人件費というもっとも重い費用を支払う余力がないという状況にあることに変わりはないと考えられます。

このような場合に、賃金の支払い停止まではできませんから、せめて賃金を下げたいということになります。しかし、状況は非常によく理解できても、会社が一方的に賃金を下げることまでは許されていないのです。

会社と従業員では、社会的には、一個人である従業員が弱者とされ、弱者に不利益になる手法には厳しいのです。経営が苦しいのだから会社も弱者であるという声は当然ありますが、残念ながら、状況的には弱者ですが、立場的は従業員のほうが弱者として扱われてしまうわけです。

ポイントは2つあります。賃金を引き下げることが許される根拠と手続きです。

まず、手続きの話です。賃金を引き下げる場合は、会社がかってにはできませんので、従業員との合意をとることが必要です。従業員の意見聴取のうえで就業規則を変える、組合との合意を得て労働協約を変えるといった段取りが必要になります。

中小企業の場合は、企業別に組合があるケースはほとんどありませんので、就業規則を変えることで対応することになります。

「就業規則を変えればいい」というと、就業規則はそもそも会社が一方的にその内容を決められるという実態がありますから、一人の従業員からでも反発をうけないようにするためには、実務的には、全従業員に対し説明をすることが必要です。

また、変更後の就業規則を周知することが必要です。法的には周知の解釈はいろいろあるのですが、賃金引き下げの場合の周知は、リスク回避の趣旨から、変更の理由と内容、変更内容の施行年月日を伝えることまですべきと考えます。

次に、賃金引き下げがゆるされる根拠の話です。賃金引き下げで従業員が受ける不利益の程度、変更の必要性、賃金引き下げの内容、これらのバランスがとれていることが根拠となります。この点のバランスの話になりますと、法的にも線引きが難しい領域であり、個別に見るしかないのです。

引き下げ幅によっては、引き下げの理由が甚大な被害によるものだったりすると認められる可能性はありますが、賃金の大幅な引き下げの場合は、よほどの理由が求められます。また、引き下げ幅が小さいから必ず認められるというものでもありません。

ただし、災害により売上が下がったという、はっきりした一定の理由があります。これに引き下げの必要性、引き下げによる影響を考慮することになります。ちなみに、このままでは、近い将来、売り上げが下がりそうだというのは理由としてなかなか認められないかと思われます。

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