コラム

 公開日: 2012-12-07 

勤務遂行能力不良を理由とする解雇

解雇事件はほんとうにあとを絶ちません。まるで減少する気配さえ感じらえません。日本では、解雇権濫用法理によって、解雇に値する理由と解雇が理不尽でないことを審査内容とする、断固とした解雇規制があるにも関わらずです。

奇しくも12.16は選挙ですが、維新の会が、競争の原理の名のもと、解雇規制の緩和を唱えています。ある意味、危険な方針であると個人的には受け止めています。

もっとも、判例法理や裁判所の判断が解雇規制を示す以上は、日本において解雇規制は、ゆるぎないわけです。前置きが長くなりました。本日ご紹介します裁判例も解雇の事案です。

勤務遂行能力がないとして解雇された事案です(クラブメッド事件・東京地判平24・3・27)。被告会社は、国際的バカンスサービス会社の日本法人(本社はパリ)で、国内・海外の系列ホテルへの送客業務、一般観光等の企画・作成・販売・斡旋等の業務を行う会社です。

解雇された原告は、アルバイトで雇用され、契約社員、正社員と雇用契約が変化してきた従業員で、コールセンターにおける問い合わせ対応業務、旅行予約受付・変更等、パンフレットの請求受付、クレーム受付などの業務を行っていました。

会社の就業規則には、「技能、能力が極めて劣り、将来業務習得の見込みがないとき」の規程があり、業務評価については、電話をとった本数、通話時間、後処理時間、予約記録作成数などを項目とする個人スコア制度が導入されていました。

従業員は、平成20年度、21年度の評価が2(不十分)であり、会社から原因分析及び改善計画を記載した書面提出を複数回にわたって指示され、提出していました。

平成22年5月以降の個人スコアは、スタッフ全体の平均値を上回り、スタッフ全体の平均値を20%以上下回った週の数も減少しており、従業員の業績は向上していたのです。しかし、同年9月には、スタッフ全体の平均値を20%以上下回る週が目立つようになっていました。

会社は、スコアのこと、これ以上業務改善の指導成果を期待できないことを書面で交付し、平成22年11月11日に同年12月11日付で解雇するとの通知をしたのです。

裁判所は、勤務成績不良を理由とする解雇は、勤務成績不良が著しく劣悪で、改善を促しても改善の余地がないと言えるか、勤務成績の不良が使用者の業務遂行全体にとって相当な支障となっているかなどから総合的に判断すべきと一般論を述べたうえで、上記の事実を検討しています。

裁判所は、上記の書面交付や報告に関係しているセールスサポートディレクターは、平成22年の業績向上をほめており、同年9月の業績下降はあるが、翌月にはまた平均値を上回っていることから、会社の主張は一時的な業績低下を言っているにすぎないと評価しました。

結局、原告の勤務成績は芳しくなかったことは否めないが、一定の向上もみたのであるから、著しく劣悪とはいえないし、改善の余地がないとうこともできないと結論し、解雇無効としました。

従業員の業績低迷を能力不足とするには、勤務歴も考慮のうえ、業績低迷が著しいことが必要なわけですが、一時的にでも向上が見られ、それが解雇日に近い時限の状況であった場合は、すんなりと解雇が認められない可能性があるということになります。

実務的には、業績低迷と言えるには、単に平均値を下回っているというだけでは、能力不足の評価は得られない可能性があり、慎重に行う必要があると考えます。

また、改善の見込みがないと言えるためには、業績低迷の原因と改善方法を書面で提出させるだけではなく、具体的に上長が指導していることが求められるものと本判決からは学ぶことができると考えます。

本判決は、現場でテーマとなりうる能力不足の従業員への対応を思考するうえでのヒントを示していると思われます。

【2012.12.07 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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