コラム

 公開日: 2012-11-26  最終更新日: 2012-11-27

契約に基づく委託料の支払い

今回のご紹介する裁判例は、就労の対価に対する報酬の支払を求めたものですが、契約実態が結論を分けました。

被告である会社は、ワンルームマンション棟を購入し、権利を分割販売し、居室を高齢者に賃貸することで、権利者が収益を得ることを業としていました。原告は、この会社と業務委託契約書と題する契約に基づいて営業活動を行っていた労働者です。

訴訟提起は、原告の営業活動に対し、支払われていなかった報酬を支払えというものです。原告は、この契約を雇用契約であると主張し、仮に請負契約であっても、報酬は発生していると主張した事案です(ASU事件・東京地判平24.1.20)。

判決は、労働者が会社の指揮命令下において労務を提供していたとは認めがたく、本件契約に労働法規の適用がないとされ、いつでも解約可能であると判断されました。

また、この事件で労働者は、本件契約期間満了後も自動更新されているとして、契約期間満了後の報酬支払も求めたが、会社は倒産である旨を通知し、本件ビジネスモデルが頓挫したことを明らかにしているとして、本件契約期間中の委託料の支払のみを認めています。

今回の裁判例は、さしずめ、労働者性の問題を扱っていますが、労働者性の判断については、1985年の労働基準法研究会報告「労働基準法の労働者の判断基準について」で、具体的な判断基準が示されているところです。

仕事の依頼に対する諾否の自由があるか、業務遂行過程につき使用者の指揮命令に服するか、業務に他の者への代替性があるか、勤務場所・時間に拘束されるか、会社の服務規律が適用されるか、仕事の用具等を使用者が提供するか、報酬の性格が給与制か出来高制かなどから総合的に判断されます。

本件の場合は、いつでも解約可能である実態や会社の指揮命令下での労務提供ではないことで、雇用契約を否定されています。

企業実務でも、運送、建設などの様々な業種で、あるいは、在宅勤務などの雇用形態で、雇用契約なのか請負なのか微妙な形態が見られます。本件の判断は参考になると思われます。

さらに、原告は、代表取締役に対し、取締役の任務に対し、会社法429条を根拠に損害賠償を請求していますが、労働者の委託料債権の侵害はないとして否定されています。

本件は、原告が給与相当額の損害に対する請求でしたので、会社法の取締役の責任は問われないものと思われますが、実務的に留意する必要があるのは、一労働者から会社の取締役責任が主張される場合もあるということでしょう。

労働者性の問題は、認められるか否かでオール・オア・ナッシングです。認められなければ、労災、雇用保険、社会保険すべて適用にならず、報酬も労働時間は関係なくなるわけです。

現実、労働者にこのことの問題が直接降りかかる場面が起きた場合、労働者も泣き寝入りしない可能性があり、今回の裁判例のようなことも想定されるところです。

【2012.11.27 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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