コラム

2012-11-25

成績不良による解雇の撤回と賃金の支払い

今回ご紹介しますのは、解雇を無効として、労働契約上の地位確認を求めた事件です。

解雇事件は、裁判例でも非常に多く、解雇規制が厳しい中でもあいかわらず問題発生はなくなりません。このコラムのテーマの中でも、取り上げる事例が多くなると予想されます。

会社のほうは、不動産一式の工事請負等を業とする会社で、従業員はそこで営業で勤務していた者です。営業成績が不良として解雇されました(山忠建設事件・東京地判平23・12・26)。

元従業員は、労働契約上の地位確認、未払賃金等の支払、元従業員が立て替えた交通費等の支払、解雇の態様が悪質であったとして不法行為に基づく慰謝料等の支払、残業代の支払、残業代に対する付加金の支払を求めています。

判決は、元従業員の営業成績が全従業員の中でどのような位置づけにあったかを的確に立証してないこと、解雇に先立ち具体的な警告等もなされていないこと、本件解雇が営業成績不良を理由とする解雇であること、これらを総合考慮して解雇は認められないとしています。労働契約上の地位確認請求は認められたわけです。

また、判決確定日までの賃金については、民法536条の2項により請求が認められるとされています。時間外請求とその付加金も認められています。

本判決では、営業成績不良の理由についての裁判所の判断が実務上、参考になると思われます。原告の営業成績がどの程度であったかが明らかでないというのは、実務でも解雇理由として妥当性を欠くことを意味します。

さらに、実務的にみても、営業成績が不良であった場合、それに対する改善を目的とする指導が一定レベルでなされていることが求められるでしょう。本判決ではこの点にも言及しています。

裁判例では、労働能力が劣り、向上の見込みがないことが解雇理由として認められるのは、「著しく労働能率が劣り、向上の見込みがない場合に限られるところ、人事考課の低さだけではこれに該当せず、また、教育・指導や配置転換の措置を尽くしていない」として解雇無効とされたものがあります。本件と合わせて参考になります。

解雇の有効性が認められなかったことによって、解雇をした理由は会社側に理由があることであり、民法536条2項による賃金債権、つまり、賃金の支払が認められました。

民法536条2項は、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」と規定しています。

つまり、会社側の理由で、従業員が労働することができなくなったときは、労働を提供するという債務を負っている従業員は、賃金(反対給付)を受けることができるということです。この点は、また、他のコラムで触れたいと思います。

加えて、元従業員が請求した慰謝料ですが、解雇により生じた損害は一時的に回復すると扱うのが相当で、就労請求権は観念できないとして否定されています。就労請求権につきまして、また、テーマになった際に触れたいと思います。

企業実務としましては、能力不足・成績不良を理由に解雇に踏み切る場合には、解雇が「最後の手段の位置づけであることを踏まえ、改善の指導等の実績、配置転換等、解雇もやむなしと認められるだけの措置をあてがうことが優先される点は注意が必要になります。

【2012.11.25 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)】

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