コラム

 公開日: 2012-11-22  最終更新日: 2012-11-23

未払給与、解雇予告手当、付加金

今回、ご紹介するのは、即日解雇された元従業員が、未払賃金、解雇予告手当、付加金を求めた事案です(AОシステムズ事件・東京地判平23・12・27 未払賃金支払認容、解雇予告手当支払認容、付加金支払請求認容)。

会社が主張するような成果を挙げなかったことを理由に従業員を解雇したものです。

これだけならば、解雇のみを判断すれば足りるのですが、会社は元従業員に損害賠償請求し、その金額を未払給与や解雇予告手当と対当額で相殺しました。

判決は、元従業員が成果を挙げられなかったとしても、そのことが勤務成績不良として、諸般の事情に照らして、解雇事由になる余地があるとしつつ、会社は賃金支払い義務を免れないとしました。

元従業員に対する損害賠償請求額と未払賃金との相殺については、労働基準法24条の全額払いの原則から、使用者が労働者に対して有する債権(この場合、損害賠償請求権)を労働者が有する賃金債権と相殺することは許されないとしています。

さらに、損害賠償請求額と解雇予告手当との相殺については、解雇予告手当は使用者が公法上の支払い義務を負っており、賃金と同様、賃金全額払いの原則の適用があるとして、やはり、相殺によって免れることはできないとしています。

この裁判例は、解雇そのものの問題ではなく、会社が支払うべき賃金等の債務と損害賠償請求という債権を相殺することが認められるかということの問題について判断している点が着目点です。

成績不良は解雇に該当する余地があるとしていますが、解雇に該当するか否かにかかわらず、上記の相殺が問題なわけです。

労基法24条を根拠に、会社側の一方的な相殺は許されないとしています。解雇予告手当の支払義務を公法上の義務であることを明確にしています。これは、労使の個別契約で動くものではないことを意味しています。

ただし、これまでの事案の中には、自由な意思による労働者の合意がある場合には、相殺も認められるとする例もあります。

従業員の支払うべき賃金がある場合、従業員に対して有する債権と相殺できないかということが頭をかすめますが、よく吟味のうえ、慎重な対応が求められるところです。

今回の裁判例は、判断する際のヒントを与えているものと思われます。

【2012.11.23 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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