コラム

2012-11-20

労働基準監督署長が認定した平均賃金額を訂正すべき使用者の義務


「労働基準監督署長が認定した平均賃金額を訂正すべき使用者の義務」

労働災害の休業補償給付の支給を受けた元従業員が、別件で会社と和解した内容の平均賃金額よりも少ない額で休業補償給付の平均賃金額を算出しているとして、その差額を会社に支払うように求めた裁判です。

(事件概要)タクシーの乗務員として働いていた元従業員が、業務中、交通事故に遭ってけがをし、大阪南労働基準監督署長から労災の休業補償給付金の支給を受けたのですが、そのときの給付基礎日額(休業補償給付金の1日の単価)が、別の和解の際に確認した平均賃金額より少ない額でした。そこで、元従業員が会社に別件和解による平均賃金額で算出した休業補償給付金と受給した休業補償給付金との差額の支払を求めたものです。(平野交通事件・大阪地判平24年7月20日 損害賠償請求棄却)

この事件では、別和解条項は、会社と元従業員の間の互譲で決められた平均賃金額であることを重視し、労働基準監督署長はそのことに拘束されるわけではないこと、別件和解条項があるからといって、会社に何も法的義務は生じないこととしています。

また、本件の場合は、別件和解の時点で、休業補償給付及び特別支給金の支給決定がされていたこと、元従業員と会社はこれを踏まえて、別件和解条項に定めるもののほかには、一切の債権債務がないことを確認したことが重視されています。

結論は、別件和解条項の平均賃金額と、労働基準監督署長が認定した平均賃金額との差額に関し、会社は元従業員に対し、何らの支払義務も負わないとしたのです。

本判決の最も重視すべきは、会社と元従業員の間の和解は、互いの意思による互譲であるので、行政の休業補償給付の決定金額には影響しないという点です。

合意による紛争解決を試みる場合は、さまざまなことを想定のうえ、和解条項に盛り込む内容を極力検討して意思決定することが非常に重要です。特に、本件でテーマとなっています休業補償給付の金額は、労災の申請手続書類の提出後でなければ、平均賃金を含めて確定されないため、このことを含む必要があると言えます。

【2012.11.20 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

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