コラム

 公開日: 2012-11-12 

災害を意識した36協定改定と残業命令拒否による懲戒処分


未曾有の災害を経験した場合、会社は様々な社内制度を見直すことに着手します。いつ起こるかわからない、何十年に一度の災害だろうとしても、一度遭遇することで、様々な社内機能がマヒしてしまうことを想定すると当然の対策と言えます。

見直しのメニューの中でも特に苦慮するのが、労働時間や休みに関する労働条件の設定の部分ではないかと思われます。

一方的に自由自在に変えるには、法的規制もかかっているうえ、従業員の労働意欲に敏感に響く部分でもあることから、一刀両断式にはいかないのが現実です。

今回のテーマは、36協定の改定ですが、従来の協定していた時間を多くする方向への改定です。法的手続きとしましては、過半数代表の従業員の合意のうえ、労働基準監督署へ届ければいいのですが、現場で想起される問題は別のところにあります。

まず、仮に、現在、1週8時間、1か月30時間の残業時間を協定しているとして、この内容を1週15時間、1か月40時間の協定にしたいとします。基本的には、上記の法的手続きを踏めば、手続の点では、協定の改定事態に法的な問題点はありません。

また、これは、協定の改定の有無に関係なく共通に理解する必要がありますが、労働基準法上の問題のない36協定が締結されたことをもって、従業員に残業を命じる権利(従業員からみると残業に応じる義務)が生じるわけではないということです。

次に、就業規則との関係ですが、36協定の改定の内容を就業規則に規定する必要があり、就業規則に定めることで統一的に運用可能な制度になると考えられます。

一方で、今回のような残業時間の延長が災害を想定したものとはいえ、残業時間を延長する内容ですから、明らかに従業員にとっての労働条件の不利益変更にあたることになります。

その場合、不利益変更の必要性、不利益の程度、不利益変更後の規定の相当性、従業員との合意の過程などの要素により、残業時間の延長という労働条件の不利益変更が判断されることになります。災害を想定している場合でも、労働条件の不利益変更の判断要素はついてまわります。

もし、今回の就業規則の不利益変更に合理性がないと判断されますと、就業規則の改定に合意していない従業員への適用ができないことになりますので注意が必要です。

さらに、就業規則の変更が合理的であるとされたとして、その規定に従わない従業員は懲戒処分の対象になるかという問題も同時に考えておく必要があります。

就業規則の規定に従わないことをもって、直ちに、懲戒処分の対象とするのは、会社のリスクが大きくなります。

残業時間の延長の規定に違反した場合の懲戒処分が規定されていることを前提に、懲戒処分の対象に該当するかどうか、懲戒処分にあたるとしても処分の程度はどうかを吟味のうえ、懲戒権が濫用にならないような範囲でのあてはめ・運用が求められるところです。

このように36協定の内容を不利益に変更する場合には、就業規則との関係、懲戒処分との関係が非常に重要になります。

また、他のコラムでも触れておりますが、労働条件の設定を検討する場合は、従業員のワークライフバランスとのテーマも考慮する必要があります。ここをおろそかにして決定した場合、従業員の士気低下、従業員との生活との関係の問題が浮上する場合も考えられます。

(2012.11.12 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄)

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