コラム

 公開日: 2015-02-20  最終更新日: 2015-02-26

蔵の鍵 ( 錠前 ) の話。

日本の歴史の中で 「 蔵 」 が盛んに作られるようになったのは江戸時代です。
戦国時代から落ち着きのある平和な武士社会に移行し、
町々には商業が発展しました。
そこで富の蓄積が始まり、商品や富を納める 「 蔵 」 が建ち並んでいきました。

それに伴い 「 蔵  」 の中身を守るための錠前 ( 和鍵 ) が重要なものとなりました。
従来の刀鍛冶が、やがて錠前師となって行ったのも歴史の必定です。
商人の要求に応じて競って立派な錠前を作るようになりました。
そのしっとりした鉄味ずっしりした重量感、表面に施された装飾など、
見る人を圧倒する存在感があります。

和錠の最盛期には、刀とおなじように銘がきざまれているものがあります。
誰が作った鍵か、誰が使う鍵か、競い合うように独特な錠前を造りました。
「 蔵 」 も 「 錠前 」 も、富を誇張したものだったのです。

おおきい漆喰造りの 「 蔵 」 は、
①夜戸 ②外戸 ③昼戸 と、三重四重に厳重に守られていました。
その扉に応じた鍵も工夫が施されています。

①夜戸は、分厚い漆喰で作られていて普段は開けてあります。
  簡単な鉤金具を掛けて、閉める時には豪華な錠前を飾りました。
  ちなみに蔵の扉に掛ける頑丈な錠前は 「せつい錠」 と呼ばれました。

②外戸は、ケヤキやヒノキなど頑丈で豪華な木材で作られています。
  当時も高価な材種であり、硬く簡単には壊すことができないものでした。
  更に、厳重な錠前をかけるようになっています。
  戸の中段端に頑丈な錠前を埋め込み、その閂を柱の穴に差し込んで閉める仕組みです。
  閉める構造は、松葉形をした板バネを鍵により絞って開錠します。
  外戸には、さらに蔵戸錠が付いています。
  蔵戸錠は戸の下方に組み込まれた日本独特の錠で 「落とし」 とも呼ばれています。
  これを開錠するとL字型の鍵は 「落とし錠」 とも呼ばれ、簡単な仕掛けで古くから蔵のほか、
  神社や寺などでも使用されていました。
  外戸は、美しさを競うところでもあったようです。
  木材の材質以外にも鉄や銅板で鍵穴周辺を飾りました。
  この錠前飾りは鶴亀、恵比寿、大黒、布袋、宝船、鳳凰など、
  おめでたい図が丁寧に彫られ、とても豪華です。

③昼戸は、昼間仕事で家のものや使用人が自由に出入りできるように鍵を掛けず、
  木製で上半分が格子になっている軽い戸のことです。
  千本格子の下が板戸になっているものです。


けれど、これらの蔵の鍵はほとんど現存していません。
鍵は古くなると新しいものと取り換え、古いものは溶かして素材として再利用されていたのです。
いずれも南京錠にとって代わられています。とっても残念です。
川越や栃木は蔵の街として有名ですが、博物館でも当時の錠前は見つかっていません。


ケヤキやヒノキといった高級材を使用して重厚に製作された建具本体と、
そこに装飾性の高い金具が組合わせれた美しい 「 蔵戸 」
材質もさることながら、技術も現代よりはるかに高いと思われる職人さんが心を込めて、
時間をかけて製作した建具を現代の住宅に使えたら素晴らしい空間が生まれると思います。
ここで問題になることは 「 蔵戸 」 を住居に生かすためには 「 鍵 」 をどうするかということです。

藍建築工房が主催する
【 古民家カフェ 藍 】 は、蔵戸を開ける楽しさを味わっていただきたいと考えています。
取り寄せたケヤキの 「 蔵戸 」 は大きさも厚みも重量もあります。
通常の引き戸として使うとなると、既製の鍵は使えません。
今のところは内側からの 「 南京錠 」 で考えています。
もう一箇所、事務所にも扉があるので、そちらからの出入りをメインにしてあります。









   ・・・・・・・・・ 鍵の種類と形状 ・・・(参考までに)・・・・・・・・・・・・・・・・
1.「落し」
 これは引き戸の下の方に取り付けて上下に上げ下げ出来る木片でのことです。
 戸を閉じたあと「落し」を敷居に嵌まり込ませて
 戸を固定するものです。
 別名を「さる」とか「こっとり」などとも呼ばれていました。
 外からはLの字の形をした鉄製の「鉤」を戸の穴から中にさしいれて
 「落し」を引き上げて開錠できるものも作られました。

2.「かんぬき」
  おもに開き戸に使われたもので、戸のほぼ中央部に水平に取り付けられています。
 左右にスライドする堅牢な木製の角棒で、
 これをコの字型の受金にさし入れて戸を固定するもので、お寺の山門などに今でも見られますが、
 「忠臣蔵」で大石蔵之助と四十七士が吉良上野之介の屋敷に討ち入る際に
 ゲンノウという大きな木槌のようなものでこ打ち壊すシーンは有名ですね。

3.「しんばり棒」
  引き戸を閉じたあと、戸が開かぬようにつっかえとして使う棒のことです。
 「つっかえ棒」とも呼ばれてます。
 一般庶民からお屋敷まで広く使われていました。

4.「栓錠」
 1.の「落し」を鉄を素材に替えて作り上げたもので、中には美しい装飾を施したものもあるなど、
 ここまで来ると本格的な錠前の一種と言えるものです。
 施錠や開錠の原理はほぼ「落し」と同じです。

5.「蝦錠(えびじょう)」
 江戸時代に入って、日本独自の本格的な錠前が作られるようになりました。
  同時に各地で急速に普及し始めました。
 そのルーツは奈良朝の頃(7~8世紀頃)に唐から伝来した海老錠とされています。
 錠本体にコの字型になったカンヌキをさし込むと、
  本体の中でバネがパチンと広がって引っかかり、カンヌキが抜けなくなるという構造をしていました。
 使い方としては今の南京錠とまったく同じです。
  今日よく使われる錠本体の正面から鍵をさし込んで
  グルリと回すと中のバネが縮められるという構造の物も作られていきます。

6.「からくり錠」
  前述のように優れた錠前製造技術を持っていた当時の錠前師ですが、
  なかでも国産の錠として世界に誇れるのが 「 からくり錠 」です。
  見えている鍵穴は実はニセモノで、本当の鍵穴は装飾の中に隠されていたり、 
  動かせる部分を正しく順序よく動かさないと鍵穴が露出しないとか、
  アイデア一杯のものが見られます。

 



こうした錠前について書かれた書籍は大変少ないのです。
今回は、「錠と鍵の世界(赤松征夫著・彰国社発行)」
と言う本に巡り合う事ができ参考にさせていただきました。




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